2020年2月29日公開の劇場版「SHIROBAKO」
アニメーション業界のありのままの姿を描いて話題になったテレビアニメ「SHIROBAKO」の劇場版映画です。
テレビ版から4年後の彼女たちを描いた本作は、テレビアニメシリーズの魅力をそのままにして劇場に帰ってきました。
今回は、劇場版「SHIROBAKO」についてご紹介します。
劇場版「SHIROBAKO」のネタバレあらすじ
あれから4年
2019年4月、武蔵野アニメーションが手掛けたテレビアニメ「第三少女飛行隊」の放送から約4年が経ちました。
制作進行役を務める宮森あおいは、この日から開始するサンジョの新シリーズの放送を見るため会議室に向かいますが、会議室に集まる人の数はまばらでかつての半数にも満たない状況です。
ムサニが企画したオリジナルアニメ「タイムヒポポタマス」が放送直前で制作中止になるという事件、「タイマス事変」によって、丸川社長は辞任し、倒産寸前まで追い込まれたものの、事業を大幅に縮小することによって、なんとか存続していました。
オンエアが始まったサンジョのシリーズは、かつてのオリジナルとはかけ離れた改悪されたような続編で、しかも、元請の立場ではなく、下請けをしていました。
以前、一緒にアニメを作った仲間達は退社し、それぞれ別の場所でのアニメ制作をやっていました。
翌日、宮森は仕事の外回りで行く途中にある食堂へ立ち寄ります。
そこは元社長・丸川正人が経営している食堂でした。
その夜、宮森は高校のアニメ同好会のメンバーで集まります。
以前まで所属していたフリーのアニメーター、安原絵麻。
3Dクリエイター・藤堂美沙。
声優・坂木しずか。
新人脚本家・今井みどり。
上山高校の文化祭で自主制作したアニメ「七福神」を皆で制作すると胸に誓った、五人共通の夢がありました。
しかし、五人とも理想通りにはいかず、仕事もうまく行かずくすぶっていました。
それでも、アニメ制作に奮闘する宮森のもとへ、社長になった渡辺隼から新作劇場版の話が舞い込んできます。
新企画の劇場版アニメ
次の日、渡辺に呼び出された宮森は現在のムサニで劇場版アニメを制作は可能か尋ねられました。
質問の意味が理解できない宮森に、新社長は一枚の「空中強襲揚陸艦 SIVA」と書かれた公開予定日まで10ヶ月後の企画書を手渡します。
「げ~ぺ~ぅ~」制作会社の企画だったこの案件を、制作してほしいという葛城からの申し出でした。
通常、劇場版アニメは制作年数に二年を要するものなのに、無理難題に驚きを隠せません。
宮森は悩んだ末、やれるだけやってみようと、この申し出を受け、制作が決定します。
宮森と渡辺は「SIVA」の制作決定の旨を葛城に伝えます。
喜ぶ葛城は宮井楓をウエスタンエンタテイメント側の担当として彼女に引き合わせました。
二人は打ち合わせがてら食事に行き、深夜までお酒を飲み、二人は日頃の鬱憤を晴らすかのように不満をぶちまけて、すっかり意気投合します。
始動、そして再集結
翌日から、慌ただしく動き始める宮森たち。
朝の会議で「SIVA」の制作決定を発表し、スタッフ集めが始まりました。
以前ムサニでアニメーターをしていた小笠原綸子に原画、井口祐未にキャラクターデザインを担当してもらいます。
そして、監督を木下誠一に依頼しようと木下の自宅に向かいまが、タイマス事変のトラウマから、監督を引き受けることに躊躇します。
かつて制作を務め、退職後ケーキ屋に転職した本田豊の協力のもと、彼が作ったモンブランの効果もあってか、木下は「SIVA」の監督をなんとか引き受けてくれることになりました。
木下の参加が決定したことにより企画会議が開かれ、タイトル以外、何も決まっていない現状に頭を抱えるメンバーに、宮森はタイマスのときにやりたかった設定や企画を「SIVA」でやってみないかと提言します。
この意見に賛同したメンバーは、作画監督を安原、脚本を舞茸に依頼し、メカニックデザインをタイマスの時のように遠藤亮介に頼みますが、彼はタイマス事変から、アニメの仕事をしてないようでした。
3D監督・下柳雄一郎はアニメーターの瀬川美里と共にタイマス事変からなかなか立ち直れていない遠藤を励ましやる気を出させます。
また、下柳は藤堂が所属するスタジオカナブンに行き、3DCGシーンの制作を依頼することになり、藤堂はチーフクリエイターに大抜擢されます。
その頃、坂木は声優養成所の先生・縦尾まりに、タレント業ばかりで、声優の仕事をなかなか回してもらえないことを相談していました。
縦尾の、やりたいことは口にしてみなさいという助言もあり、坂木は自身の所属事務所に来ていた「SIVA」のオーディションの話を受けることを熱望します。
一方、脚本の進捗状況が芳しくなく、ヒロインの設定に行き詰っていました。
そんな中、行われたオーディションで舞茸は坂木の声をヒントにして、ヒロインのインスピレーションが湧き出ます。
舞茸は以前より世話をしていた今井にヒロインについてアドバイスを求め、脚本協力として「SIVA」に参加するよう頼み込み、共に脚本を完成させます。
ところが、次は木下の絵コンテの進捗状況がよろしくありません。
宮森は逃亡癖のある木下を缶詰にし、絵コンテを書かせますが目を離した隙に、逃亡されてしまいます。
逃げ切って安堵する木下の前に、父の看病のために実家に行っていてしばらく一線から遠ざかっていた矢野エリカが現れました。
こうして戻ることになった木下は脅迫に近いエリカの強引な励ましにより、絵コンテを完成させることができたのです。
その頃、作画チェックを終え、演出チェックにまわした原画に修正案を持ち掛けられる安原。
演出の円宏則にダメだしをされて安原は自信を失っていました。
下柳は、宇宙船が爆発する追加制作シーンの発注でスタジオカナブンに来ていました。
それを聞いた藤堂はすぐに引き受けようとしますが、カナブンの社長は作業量的に厳しい見込みなために断ろうとします。
しかし、藤堂の部下の女性スタッフが爆発のエフェクトのスペシャリストで、そのスタッフのおかげで依頼を受けてもらえました。
このとき、藤堂は部下の才能に気づけなかった自分の管理能力に歯がゆい思いをします。
その頃、宮森の元へ、在宅で仕事をしている古参・杉江茂が現れます。
杉江は子供アニメイベント企画を手伝ってくれる人を探し求めていました。
そこで、元上山高校アニメ同好会のメンバー5人は杉江のイベントの助っ人に行きます。
イベントの日、5人はなんとか子供たちとア二メを完成させ、その完成披露の放映で、目を輝かせて喜ぶ子供達の姿を見て初心を取り戻す5人のメンバーたちでした。
イベント後、藤堂は部下の才能を伸ばすように働きかけていき、安原は円が認める原画を描き上げ、坂木のところにはヒロイン役に決まったことが知らされます。
こうして迎えたSIVA制作はこのまま順調にいくかのように思えました。
一本の電話がかかってくるまでは・・・。
劇場版「SHIROBAKO」のラスト結末
守るべきもの
その電話は散々、SIVAをないがしろにしてきた、げ~ぺ~ぅ~の社長からでした。
制作が順調にすすんでいて、公開に無事こぎつけそうだという情報が入った社長は、制作に関する権利主張を申し立ててきたのです。
彼女らの間に動揺が走り、かつてのタイマツ事変のことが脳裏によぎります。
宮森が公園で考えを巡らせていると、あるヒントが思い浮かび、すぐに調べものに取りかかりました。
それが終わると、宮井と共にげ~ぺ~ぅ~の社長に直接異議を申し立てに行きます。
社長は契約書を盾にこちらに権利があることを主張しますが、二人は契約書の一項目を逆手にとって、見事に社長の契約書を破棄させることに成功するのでした。
どんどんドーナツ、どーんと行こう!
公開三週間前には無事完成を迎えましたが、宮森はどこか引っかかっていて、木下にそのことを打ち明けるのです。
彼も同じ思いであることを知り、SIVAの試写会を行い、感想を求めると、やはり皆も終盤の盛り上がりに不満を感じているようでした。
公開まで残りわずかにして、修正案を提案する宮森。
スタッフ全員に動揺も走りますが、みんなを前にして頭を下げお願いする二人に、快く承諾して全員が一丸となって終盤のシーンの作り直しに取り掛かるのです。
公開日当日、「空中強襲揚陸艦 SIVA」は無事公開を迎えることができました。
いつものメンバー5人は劇場へと足を運び、鑑賞します。
ドーナツを手に掛け声を上げ、彼女たちの新しい挑戦が始まるのでした。
劇場版「SHIROBAKO」の感想
本作は、アニメーション制作の舞台裏を、その暗部にもしっかりスポットをあててリアルに描かれていましたね。
登場人物の人数が多いことから、そのアニメ制作に携わる人数や仕事量、役割分担とそれぞれが自分の仕事に責任をもってやりとげて、やっと一つの作品ができあがるのだという苦労といったアニメ制作の現実もしっかりと表現されていたと思います。
劇中に出てくる駅やお店などの背景も、実際に存在するものが多数モデルになっていたりしていて、リアリティへの追及の徹底ぶりが感じられる作品となっています。
4年前と変わらずに本作の中でも、夢にまっすぐにつきすすむ若者の姿にたくさんの勇気をもらえました。
夢に向かってがんばる人への応援歌としておすすめの映画です。
劇場版「SHIROBAKO」のロケ地や聖地については、こちらを見てみてください。