ナチスの意味なんてよくわかっていない子どもたちに、”ハイル・ヒトラー”を教え込む大人たち。
自分の人生に足りないものを、空想の友だちに、ナチスに求めていく少年。
戦時中とは思えないカラフルファッションに身を包んだ明るく元気なお母さんをはじめ、ギリギリのユーモアセンスで、第二次世界大戦の恐ろしさを伝えています。
自分が何を信じるのかは、自分で決めるものなんだと教えてくれます。
ジョジョ・ラビットのネタバレあらすじ
第二次世界大戦中のドイツ。
きょうから始まる”青少年ヒトラーユーゲント(1936年から加入は義務)”の合宿に参加するジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は緊張していました。
「僕には無理かも。」
空想上の友だちのアドルフ(タイカ・ワイティティ)は、「お前のナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励まし、ジョジョは気を取り直します。
青少年らを待っていたのは、戦いで片目を失ったクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)や教官のミス・ラーム(レベル・ウィルソン)たちによるハードな訓練でした。
ヘトヘトになりやっと一日目を終え、唯一の現実の友だちヨーキー(アーチー・イェーツ)と眠りにつきました。
翌日、年の差はほとんどないような教官からウサギを殺すように命令されますが、ジョジョにはできませんでした(殺す理由がわかりませんので、逃がそうとします)。すると臆病なウサギと重ね、”ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられてしまいます。
父親(2年間音信不通)のこともバカにされ、泣きながら森の奥へ走り去ります。
アドルフが現れ、また励ましてくれます。
元気を取り戻したジョジョは、手りゅう弾を訓練中の仲間の元に戻り、勢いから手りゅう弾を投げますが失敗して、自分の足元に落とし大けがを負います。
合宿はここまでです。
たった一人の家族である母ロージー(スカーレット・ヨハンソン)は、ユーゲントの事務所に抗議に行きます。そこには監督不行届で事務職に降格したクレンツェンドルフ大尉たちの姿がありました。彼の指導の元、しばらくは身体に無理のない奉仕活動を行うことになりました。
ロージーの留守中(彼女はなにやら毎日出かけていきます)、ジョジョは亡くなった姉インゲの部屋で物音を聞きます。そして隠し扉も見つけ、おそるおそる中をのぞきました。
すると、エルサ(トーマシン・マッケンジー)というユダヤ人の少女が匿われていました。驚いたジョジョは通報しようとしますが、「あんたもお母さんも協力者だと言うわ。全員死刑よ」と逆に脅され、大切なナイフまで奪われてしまいました。
エルサは亡くなったインゲの友人のようで、ロージーが彼女を守っていました。
母は出かけてばかりだし、父のことは何も聞かされないし、どうやってエルサを追い出したらいいのか、ジョジョはパニック気味です(アドルフと相談です)。
ジョジョは当たり前に反ユダヤのプロパガンダを信じています(ユダヤ人には角が生えていると信じています)。
考えたジョジョは、ユダヤ人についてリサーチして本を書こうと思いつきます。エルサに「ユダヤ人の秘密を全部話せば、ここに住んでもいい」と条件を出します。
エルサによる”ユダヤ人講義”の始まりです。
話せば話すほど、エルサは聡明でユーモアがあることがわかります(ユダヤ人は下等な悪魔だと教わったのに)。しだいにエルサの話だけではなく彼女自身にも惹かれていきます(そうなるともう余計に教え自体に疑問を感じます)。
そのころロージーは”ドイツ国民に自由を”という反ナチス運動をせっせと行っていました。
ある日、ディエルツ大尉率いるゲシュタポが突然家宅捜索にやってきました。エルサのことがばれたのかと慌てるジョジョ。しかしエルサは堂々と姿を現し、姉のふりをします。いくつかの質問に答え、見事に騙しとおしたと思いましたが、実は誕生日を間違えていました(確認したクレンツェンドルフ大尉が見逃したのです)。
いよいよ大戦は最終局面へと向かいます。
ジョジョ・ラビットの結末
街を歩いていたジョジョは、ロージーと訪れたことのある広場で、見慣れた靴を見つけます。そこで見たものは・・・ゲシュタポに捕らわれ、首を吊られた母の姿でした。
泣きながらエルサに当たりますが、彼女は優しく包んでくれます。二人に絆が育っていきます。
街で久しぶりの友人ヨーキーにも出くわします。いまや正規兵として戦場に出ている彼から、アメリカ軍が迫っていることや、ヒトラーが自殺を図ったことを聞きました。いったいこれまで自分が信じてきたことは何だったか、ジョジョはわからなくなりました。
ドイツは負けました。
アメリカ兵によってナチスの関係者が集められ、処刑されていきます。ジョジョも連行されてしまいましたが、クレンツェンドルフが「ユダヤ人め!」をわざと大きな声で叫び、救ってくれました(「ロージーは善良な女性だった」とも言ってくれました)。
空想の友、心の友であったアドルフと決別しました。
エルサと共に外に出て、自由をかみしめながら踊りました。
ジョジョ・ラビットの感想
いつも陽気に明るく、たっぷりの愛情を持って、シングルマザーとしてジョジョを育てているロージー。両親は反ナチスなのに息子はナチスに傾倒していく。自分自身で気づいてほしいと見守る強さ。この母に守られていたから、ジョジョは(無邪気な残酷さも含めて)子どもらしくこの時代を生きられたのだと思います。
主張のあるカラフルなファッションもとても印象深く、スカーレット・ヨハンソンのこの抑えた演技は助演女優賞にふさわしいと思います。
この映画を観た直後は、ナチスをここまでユーモラスに描いてよいのかと反発心も芽生えました。しかし監督自らの”マオリ系ユダヤ人”としての体験が土台にあって、これまでとは違った形で、この戦争の恐ろしさを語る方法を見つけたんだと言われては、反論はありません。
実の親よりもヒトラーを信じるよう洗脳された子どもたち。
いつの時代も、どんな状況でも、大人は子どもの手本となり、善い人間になれるように導いてあげなくてはいけないのですよね。